テント倉庫
2025.05.29

営業倉庫の選び方と種類別の特徴を理解し最適な物流を実現するコツ Part2

商品の保管場所の確保に悩む物流管理者の方も多いのではないでしょうか。営業倉庫は種類も多く、選定基準も複雑なため、最適な選択に迷うケースが少なくありません。

本記事では、営業倉庫の法的要件から種類別の特徴、選定時の重要ポイントまで、実務で役立つ情報を3つのPartに分けて解説します(本記事はPart2)。これらの知識を活用することで、自社に最適な倉庫を見つけ、効率的な物流体制の構築が可能になります。

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倉庫業法の要件を満たす!営業倉庫の登録と申請のポイント

営業倉庫を始めるには、倉庫業法に基づく登録申請が必要不可欠です。申請には保管施設の物理的基準や倉庫管理主任者の配置など、複数の要件を満たす必要があります。

このセクションでは、倉庫業法の基本要件から具体的な申請手続きまで、営業倉庫の開設に必要な実務的なポイントを、法令に則して分かりやすく解説します。

物品の種類と保管可能な営業倉庫

倉庫業法では、保管物の種類によって営業倉庫の分類がなされます。

第1類物品から第8類物品まで分類されており、事前に該当する保管物を確認する必要があります。

物品の種類  内訳  保管可能な営業倉庫  
第1類物品第2類物品、第3類物品、第4類物品、第5類物品、第6類物品、第7類物品及び第8類物品以外の物品1類倉庫、貯蔵槽倉庫(※ばらに限る) 
第2類物品 麦、でん粉、ふすま、飼料、塩、野菜類、果実類、水産物の乾品及び塩蔵品、皮革、肥料、鉄製品その他の金物製品、セメント、石こう、白墨、わら工品、石綿及び石綿製品1類倉庫、2類倉庫、貯蔵槽倉庫(※ばらに限る)
第3類物品 板ガラス、ガラス管、ガラス器、陶磁器、タイル、ほうろう引容器、木炭、パテ、貝がら、海綿、農業用機械その他素材及び用途がこれらに類する物品であって湿気又は気温の変化により変質し難いもの  1類倉庫、2類倉庫、3類倉庫 
第4類物品  地金、銑鉄、鉄材、鉛管、鉛板、銅板、ケーブル、セメント製品、鉱物及び土石、自動車及び車両(構造上主要部分が被覆されているものに限る。)、大型機械その他の容大品(被覆した場合に限る。)、木材(合板及び化粧材を除く。)、ドラムかんに入れた物品、空コンテナ・空びん類、れんが・かわら類、がい子・がい管類、土管類、くず鉄・くずガラス・古タイヤ類等野積で保管することが可能な物品 1類倉庫、2類倉庫、3類倉庫、野積倉庫
第5類物品  原木等水面において保管することが可能な物品 1類倉庫、2類倉庫、3類倉庫、野積倉庫、水面倉庫 
第6類物品 容器に入れてない粉状又は液状の物品貯蔵槽倉庫
第7類物品 消防法(昭和23年法律第186号)第2条の危険物及び高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第2条の高圧ガス 危険品倉庫  
第8類物品農畜水産物の生鮮品及び凍結品等の加工品その他の摂氏10度以下の温度で保管することが適当な物品 
冷蔵倉庫

倉庫の保管施設に求められる施設設備基準

営業倉庫の種類は、倉庫業法に基づいた施設設備基準により、一類倉庫、二類倉庫、三類倉庫、野積倉庫、水面倉庫、貯蔵槽倉庫、危険品倉庫、冷蔵倉庫の8種類に分類されています。

安全かつ適切な保管サービスを提供するため、営業倉庫の種類に応じて以下の基準を満たす必要があります。

施設設備基準第一類第二類第三類野積水面貯蔵槽危険品冷蔵
1使用権原(倉庫の土地又は建物の所有権を有しているか等)
2関係法令適合性(建築基準法、高圧ガス保安法に適合しているか等)
3土地定着性等(屋根、壁を有し、土地に定着しているか等)
4外壁、床の強度(外壁は2,500N/㎡以上の強度、床は3900N/㎡以上の積載荷重を有する等)
5防水性能(雨樋を有し、倉庫内等に樋及びに水を使用する設備がない等)
6防湿性能(床はコンクリート造で金こて押さえ仕上げとなっている等)
7遮熱性能(屋根及び外壁が耐火構造である等)
8耐火性能(耐火建築物である等)
9災害防止措置(倉庫の外壁から10m以内に建築物がない等)
10防火区画(耐火構造の床・壁等で区画し開口部は防火戸となっているなど)
11消火設備(消火設備を設置している等)
12防犯措置(施錠扉や照明設備などの防犯設備が講じられている等)
13防鼠措置(下水管に通じる部分に金網を設置する等)
14防護措置(倉庫の周囲が高さ1.5m以上の鉄柵で防護されており、水面に面していない等)
15防犯措置(防護施設周辺部照明は2ルクス以上ある、又は機械警備の設置等)
16屋上床強度等(屋上床の耐力は3900N/㎡以上あり、周囲に落下防止の防護ネットを展張している等)
17水面防護措置(周囲が築堤がある等)
18流出防止措置(貨物を杭に係留している等)
19土地定着性等(土地に定着し、かつ周壁により密閉された貯蔵槽である等)
20周壁底面強度(壁面は2,500N/㎡以上の強度、床は3900N/㎡以上の積載荷重を有する等)
21通報設備(倉庫内と外部との連絡のための通報機その他の設備を有する等)
22冷蔵設備(冷蔵室の保管温度が常時摂氏10度以下に維持する能力がある等)
23温度計等(集中管理システムにより庫内温度は電光掲示板で確認出来る等)

倉庫管理主任者の要件と配置基準

倉庫管理主任者は、倉庫業法で定められた営業倉庫の適切な運営に不可欠なものです。この資格を取得するには、倉庫業での実務経験が必要です。

実務経験要件3年以上の実務経験または2年以上の指導監督的実務経験
試験科目倉庫業法の概要、労働災害防止への取り組み、火災防止への取り組み、内部監査の体制整備

倉庫管理主任者は、保管品の管理や荷役作業の安全確保、従業員の労務管理など、倉庫運営の中核を担う重要な役割を果たします。特に危険物を取り扱う倉庫では、より厳格な配置基準が適用されます。

倉庫の規模拡大や新規事業展開を見据え、計画的な人材育成と資格者の確保が重要です。また、法令遵守の観点から、配置基準を下回らないよう適切な人員配置を行う必要があります。

申請書類の作成から認可までの流れ

営業倉庫の登録申請には、事業計画書や財務諸表など複数の書類作成が必要です。申請書類の作成から認可までの標準的な流れを理解しておくことで、スムーズな手続きが可能になります。

以下が、申請から認可取得までの主な流れと必要書類です。

申請時の必要書類(例:一類倉庫)
・倉庫業登録申請書
・倉庫明細書
・施設設備基準別添付書類チェックリスト
・土地建物の登記簿謄本
・建築確認申請書
・建築確認済証
・完了検査済証
・その他図面以外の書類(例)

・消防用設備に関する資料
・警備に関する書類
・構造計算書
・平均熱貫流率計算書
・営業用倉庫として登録する部分の求積図
・照明装置に関する書類
・冷蔵倉庫関係(冷蔵倉庫の場合のみ必要)
・その他

・倉庫周辺の見取図
・倉庫の配置図
・平面図
・立面図
・断面図
・矩計図
・建具表
・倉庫管理主任者関係書類
・法人登記関係等書類
・戸籍抄本等
・宣誓書
・倉庫寄託約款

申請書類の受理後、地方運輸局による書類審査が行われます。要件を満たしていると認められれば、登録番号が交付されます。

登録後は、期末倉庫使用状況報告書、受寄物入出庫高報告書、保管残高報告書の届出が必要です。施設の増設や変更、事業の譲渡など重要な変更が生じた際には、改めて変更申請の手続きが求められます。

まとめ

営業倉庫の選択は、物流業務の効率化と経営コストに直結する重要な判断です。本記事では、営業倉庫の種類や特徴を踏まえた選び方から、最適な物流を実現するためのポイントまでを詳しく解説しました。

これらの知識を活用し、貴社の事業規模や取扱商品に最適な営業倉庫を選定することで、効率的な物流体制の構築が可能になります。