商品の保管場所の確保に悩む物流管理者の方も多いのではないでしょうか。営業倉庫は種類も多く、選定基準も複雑なため、最適な選択に迷うケースが少なくありません。
本記事では、営業倉庫の法的要件から種類別の特徴、選定時の重要ポイントまで、実務で役立つ情報を3つのPartに分けて解説します(本記事はPart3)。これらの知識を活用することで、自社に最適な倉庫を見つけ、効率的な物流体制の構築が可能になります。
最適な営業倉庫を見つけるコツ~立地・設備・コストの視点から
営業倉庫の選定は、物流戦略の要となる重要な意思決定です。立地条件や設備環境の適切な判断、コスト管理の視点が不可欠となります。本記事では、アクセス効率や保管環境、セキュリティ体制から、物流パートナーとの連携やBCP対策まで、最適な営業倉庫を選ぶためのポイントを実践的な視点でご紹介します。
アクセスと配送効率を重視した立地選び
営業倉庫の立地選びでは、物流効率を最大化できる場所を選定することが重要です。配送コストの削減と納期順守を実現するため、高速道路のインターチェンジや主要幹線道路へのアクセスの良さを最優先で検討する必要があります。
物流施設の効率的な運営には、24時間365日の稼働が求められます。住宅地から適度な距離を確保し、夜間の搬出入作業による騒音トラブルを防止することも大切なポイントです。
立地選定のチェックポイント例
アクセス条件 | 高速IC・幹線道路から10km以内が理想 |
配送圏 | 主要配送先まで2時間以内で到達可能 |
敷地条件 | 大型トラック複数台の待機・旋回スペース確保 |
さらに、倉庫への進入路の幅員や勾配、構内での大型車両の動線設計にも注意が必要です。トラックの安全かつスムーズな出入りを確保できる敷地形状であることを、事前に十分確認しましょう。
保管品目に適した設備環境の見極め方
保管品目の特性に応じた適切な倉庫設備の選定は、商品価値の維持と作業効率の向上に直結します。保管環境の要件を明確にし、それに見合った設備を備えた倉庫を選ぶことが重要です。
保管品目別に必要となる主な設備環境の要件を以下にまとめました。
保管品目 | 必要な設備・環境 |
食品・生鮮品 | 温度管理設備、防虫設備、衛生管理システム |
電子機器 | 防湿設備、静電気対策、温度管理システム |
重量物 | 高床耐荷重、天井クレーン、フォークリフト通路 |
建物構造面では、天井高や柱間隔、床耐荷重といった基本仕様が荷役作業の効率を左右します。一般的な営業倉庫の天井高は6〜8m程度ですが、自動ラック設備を導入する場合は12m以上必要となるケースもあります。
また温度や湿度の管理機能、防虫・防塵対策、換気システムなど、保管品の特性に応じた環境制御設備の有無も重要な判断基準です。これらの設備要件を事前に整理し、実地調査で確認することで最適な倉庫選びが可能になります。
防災・セキュリティ体制の確認ポイント
荷物の安全な保管には、充実した防災・セキュリティ体制が不可欠です。倉庫選びの際は、以下の重要な設備と体制が整っているか確認しましょう。
- 防災設備:スプリンクラー、防火シャッター、自動火災報知設備、耐震補強、止水板などの設置状況
- セキュリティ設備:防犯カメラ、入退室管理システム、警備員の24時間常駐体制
- 非常時対応:避難経路の明確な表示、防災マニュアルの整備、定期的な避難訓練の実施
- 法定点検:消防設備・防火設備の法定点検記録、点検実施サイクルの確認
- 従業員教育:安全衛生教育、防災訓練、セキュリティ研修の実施状況
特に重要なのは、これらの設備や体制が形式的なものではなく、実際に機能していることです。定期的な設備点検や訓練記録の確認を通じて、実効性のある防災・セキュリティ体制が構築されているか見極めましょう。
また、倉庫業者のBCP(事業継続計画)の有無も重要なチェックポイントです。災害発生時の具体的な対応手順や、早期復旧に向けた計画が明確に定められているかを確認することをお勧めします。
料金体系と維持コストの比較方法
営業倉庫の料金体系は複雑で多岐にわたるため、総合的なコスト評価が重要です。料金体系を正確に把握し、実質的な維持コストを見極めることで、最適な倉庫選びが可能となります。
料金区分 | 主な内容 | 算出基準 |
保管料金 | 商品の保管スペース | 坪数×日数 |
荷役料金 | 入出庫作業 | 作業時間×人数 |
入出庫料金 | 搬入搬出作業 | パレット数×回数 |
基本料金に加え、電気代や空調費用、設備保守費など、固定費用の把握も欠かせません。季節による光熱費の変動や、作業量に応じた人件費の増減も考慮に入れる必要があります。
長期契約による割引制度や季節変動料金の有無、さらにはフォークリフトなどの荷役機器のレンタル料金も含めて総合的に検討しましょう。オプションサービスの料金体系も倉庫選びの重要な判断材料です。
保管スペースの効率的な活用術
保管スペースの効率的な活用には、商品特性に応じた収納設計と動線確保の両立が欠かせません。効率的な空間活用のポイントを以下にまとめました。
- ・パレットやラックの配置は、商品サイズと回転率に基づき最適化し、積載効率を30%以上向上可能
- ・天井高を活かした垂直収納で床面積あたりの保管量を2倍以上に拡大
- ・フォークリフトの作業半径を考慮した通路幅3m以上の確保が安全性向上に必須
- ・季節商品用に全体の20〜30%を可変エリアとして設定し、需要変動に対応
特に垂直方向の空間活用では、天井高に応じた適切なラックシステムの選定が重要です。一般的な天井高6〜8mの倉庫では、パレットラックを3〜4段に設置することで保管効率を最大化できます。
需要変動の大きい商品を扱う場合は、可変エリアを設けることで柔軟な運用が可能です。エリア区分けには可動式パーティションの活用も効果的な手段の一つです。
物流パートナーとの連携体制づくり
物流パートナーとの良好な関係構築は、安定した物流オペレーションの実現に不可欠です。効果的な連携体制を構築するには、以下の3つの取り組みが重要です。
- ・月次での業務報告会と改善提案会議の開催:在庫回転率や出荷精度などのKPIを共有し、課題解決に向けた具体的な改善策を協議
- ・緊急時対応マニュアルの整備:災害発生時や繁忙期における人員配置計画、代替輸送ルートの確保など、具体的な対応手順を文書化
- ・システム連携による情報共有:在庫状況や配送進捗をリアルタイムで把握し、データに基づく効率化施策を立案・実行
特に重要なのは、定期的なコミュニケーションの場を設けることです。お互いの課題認識や改善アイデアを共有し、PDCAサイクルを回すことで、継続的な業務改善が可能となります。
また、緊急時の連絡体制や対応手順を明確化しておくことで、不測の事態にも迅速な対応が可能です。システムを活用した情報共有により、より正確なデータに基づいた意思決定と業務改善を実現できるでしょう。
事業拡大とBCP対策の両立戦略
事業拡大を見据えつつ、災害リスクに備えた物流体制の構築には、複数拠点による分散戦略が効果的です。経済産業省の調査によると、東日本大震災以降、物流拠点の複数化を実施した企業の87%が事業継続性の向上を実感しています。
物流量の増加に対応するため、倉庫の拡張性は重要な検討要素です。具体的には以下の3つの観点から計画を立てることが推奨されます。
- ・倉庫スペースの段階的な拡張可能性の確認
- ・自動化・機械化設備の導入余地の確保
- ・物流量増加に応じた人員配置計画の策定
エリア特性を活かした配送網の最適化も重要です。人口動態や交通インフラの整備状況を考慮し、将来的な商圏拡大も視野に入れた拠点配置を検討します。
また、各拠点間での在庫情報の共有や輸送ルートの代替案を事前に準備することで、緊急時の相互バックアップ体制を確立できます。このような戦略的な拠点配置により、事業の継続性と成長性の両立が可能となります。
まとめ
営業倉庫の選択は、物流業務の効率化と経営コストに直結する重要な判断です。本記事では、営業倉庫の種類や特徴を踏まえた選び方から、最適な物流を実現するためのポイントまでを詳しく解説しました。
これらの知識を活用し、貴社の事業規模や取扱商品に最適な営業倉庫を選定することで、効率的な物流体制の構築が可能になります。